糖尿病網膜症とは
糖尿病によって起こる網膜組織の障害
目の奥には「網膜」とよばれる組織があります。網膜は多くの毛細血管が広がっており、この血管が出血して網膜に濁りが生じることがあります。網膜組織にこのような障害が起こると、視力低下が生じます。
糖尿病による三大合併症の一つ
糖尿病には、三大合併症というものがあり、眼の網膜の障害はその合併症の一つです。本来、血液はサラサラしていますが、糖尿病の場合はシロップ状のドロドロした血液になります。そのため、毛細血管が多く密集している場所は血液が滞ってしまい、詰まりやすくなってしまいます。
発症リスク
- 血糖値が200を超えている(HbA1cが7.0以上)
- 長期(5年〜10年)に渡って、HbA1cが基準値を超えている
上記に該当する方は、網膜症の発症リスクが高いと診断されます。
糖尿病の治療を受けている方
現在、糖尿病の治療を行っている方でも、糖尿病網膜症を発症するリスクがあります。特に、長く治療を受けている方は注意が必要です。
- 糖尿病と診断を受けた方
- 現在、治療を受けている方
- 糖尿病の疑いがある方
は、眼科での定期検査が推奨されます。
早めに対処できれば、病気の進行は抑えられます。気になる方は、一度当院へご相談ください。
糖尿病網膜症の検査・治療法
眼底検査
糖尿病網膜症の検査では、眼の奥の状態をより正確に把握するために散瞳検査(さんどうけんさ)を実施します。
眼の奥は暗いため、光を当てることで見やすい状態を作りますが、光を当てると瞳孔(光線が眼球の中へはいる入口)が小さくなってしまうため、それを防ぐ方法として散瞳(瞳を広げる)薬を点眼します。
検査後は、薬の効果がおおよそ3~4時間程度続きます。一定時間の間は眩しさを感じ、目が見づらい状態になります。
※ 車を運転して来院された方は、散瞳薬の効果が消えるまでお待ちいただく必要がありますのでご了承ください。
網膜の病状変化
網膜組織に障害が生じてくると、単純糖尿病網膜症と診断されます。
眼底には
- 小さな点状出血
- やや大きめの斑状出血
- 毛細血管瘤(毛細血管が膨らんでできる塊)
- 脂肪やたんぱく質が沈着してできたシミ(硬性白斑)
- 血管がつまってできたシミ(軟性白斑)
などが、確認できます。
初期段階では、視力にはほとんど影響がありません。この段階で血糖値を下げるなど内科的な血糖コントロールができれば治癒できる可能性が高いです。
自覚症状はほどんどないため、成人検診や眼科でしっかりと眼底検査を受けるようにしましょう。
糖尿病網膜症の治療法
初期症状(単純網膜症)の方
内科的な血糖コントロールによって、
- 毛細血管が詰まる
- 出血する
というような血管障害を抑えます。
病状が進行している方
眼底出血等が発症している場合は、レーザーによって新生血管の発生を防ぐための治療を行います。
黄斑浮腫が生じている場合
抗VEGF(血管内皮増殖因子)抗体硝子体内注射を検討します。
さらに病状が進行している場合は、外科的手術による治療が検討されます。